秘密基地を作ったり、探検に行ったりしませんでした?
そのときには電信柱から10秒以上離れちゃいけないとか、今考えるとわけのわからないルールを作ったりして、でもそれを真剣に守ってたり結構楽しかったものです。
この話の主人公"わたし"が魅せられたのは、送電線の鉄塔です。"わたし"の家の近所には高いのやら低いのやら、腕の数が違ったり、色んな形の鉄塔があります。
ある日、近所の鉄塔に「武蔵野線75-1」と記されていることに気づきます。その隣の鉄塔は「武蔵野線76」でした。じゃあ反対側は? 見に行くとそっちは「武蔵野線75」、そしてさらにその先は「武蔵野線74」となっている!
つまり送電線をたどっていくと、いつかは「武蔵野線1」にたどり着く。その鉄塔はどんなところにあるんだろう?どんな形なんだろう?そしてその先には何が?きっと秘密の原子力発電所があるに違いない!
そう思った"わたし"は、親友のアキラを誘ってNo.1を目指す冒険にでかけます。
この本は第六回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した作品だそうですが、選考委員の間で物議をかもしたらしいです。
あらすじたけを見ると、あの「スタンドバイミー」のような主人公が少年のロードゴーイングムービーのようですが(事実映画化されています)、原作はなかなかくせもの。
なにせ、いたるところに作者の鉄塔に対する愛情が、これででもかと、満ち溢れているのです。
一言で言えば「鉄塔フェチ」。
主人公(作者)に言わせると、鉄塔には男と女があり、さらには婆ちゃん鉄塔やコック長鉄塔もあります。肉体美あふれる鉄塔と書かれたときにはクラクラします。そして小説の中身もさることながら、各ページには武蔵野線の鉄塔写真が載っているというレイアウト!これは小説なのか、鉄塔ガイドなのか!?
読み始めの当初ははっきりいって表現に癖あるし、鉄塔に対する愛情たっぷりの表現にクラクラしっぱなしでした。しかし独特の語り口の文章を読み進めるに従って、作者にだんだん洗脳されてきます。
やがて今度はどんな鉄塔だろうとワクワクしだし、そして読み終えるころには立派な鉄塔マニアの出来上がりです(笑)。もう身の回りにある鉄塔が気になって仕方なくなります。
著者 銀林みのる
ジャンル 小説
出版社 新潮文庫
文庫版 500ページ
価格 500円
※読んだのはハードカバーですが、ここでは文庫を紹介します。
また映画化されたもののDVDは下記の通り
コメント (2)
こんにちは。初めてコメントします。
この本、『文学賞メッタ斬り!』で紹介されていてずっと気になっていたんですが、品切れ・絶版なんですよね。隣の市(隣の市の図書館のほうが近いのです)の図書館蔵書検索をしたら隣の駅のほうの図書館にあることがわかりました。さっそく読んでみたいと思います。そして鉄塔オタクになってみたいと思います。
Posted by: Izumi | 2004年10月29日 12:10
日時: : 2004年10月29日 12:10
Izumiさん、こんにちは。
私もこの本は賞を受賞した時から気になっていました。ただ読みそびれているうちにタイトルを忘れてしまって...そうしたら先日の朝日新聞の土曜版にちらりと紹介が出ていたので(その記事も鉄塔マニアの記事でした)図書館で借りてきました。
自動出納書庫に入ってました。
あんまり読む人がいないのかな?
Posted by: yomikaki | 2004年10月29日 22:16
日時: : 2004年10月29日 22:16