第二次大戦中、ポーランド陸軍中尉だった著者は、ポーランドを"解放"する為に攻め込んできたロシアにスパイの濡れ衣を着せられ、強制労働25年の刑を課せられるところから物語は始まります。
シベリアまでの家畜列車での移送、風雪吹き荒ぶシベリヤの雪原を鎖に繋がれながら、もうすぐ北極圏という第303収容所までの死の行進。 想像を絶する世界です。
やがてたどりついた収容所。
仲間との出会い、そして準備と話は進み、脱走そしてインドまでの道のりと続きます。
この話はあまりに出来すぎていることから、海外では”作り話”の説が絶えないと聞きます。
確かにシベリアの原野を横断し、モンゴルの草原そしてゴビ砂漠を横切り、ヒマラヤを越えるなどという話は、俄かには信じがたいものです。しかも装備もなにもないんですから。
その上ヒマラヤで雪男を見かけたとか、シベリヤの原野で同じく脱走してきたポーランド人の少女と出合って、一緒に脱出を続けたとかいうところは、まさに作り話っぽいなと思います。
でも草原を移動するモンゴル人部族との出会い、そしてもてなし。サーカシア人一家との一夜など体験したものでないと語れないなにかを感じました。
真贋の論争はともかく、確実に言える事が一つあります。
それはこの本に多くの人が惹きつけられているという事。
原書の初版は1956年、今から50年前です。それが今や25カ国語に翻訳され今も版を重ねているそうです。私だって、なぜ日本でもっと早く翻訳されなかったのか信じられないくらい面白く感じました。
真贋は一旦脇においておいてく、読み物としては傑作のひとつに入ると思います。
著 者 スラヴォミール・ラウィッツ
訳 者 海津 正彦
ジャンル ノンフィクション
出版社 ソニーマガジンズ
四六版 383ページ
価 格 2,310円