「袖摺りあうも他生の縁」。
阪急今津線の中で繰り広げられる人間模様を描いたオムニバスの短編集です。たまたま同じ電車に乗り合わせただけの老若男女。
そんな他人が同じ車内で励まさられ、叱られる。例えそれが直接声を交わさなくても...
微妙に絡み絡み合う16話が一冊の本としていい感じにまとまっています。
前半の8話が宝塚から西宮までの電車の中の話。後半は折り返しと称して逆方向の車中の話です。この折り返しの後半は、 前半の話の続きになっているのがまたニクい構成。前半は雑誌に連載されていたようなのですが、 後半部分を書き下ろしで追加したことで読後感が爽やかになっています。
第二話なんて、それだけ読んだらドロドロの怨念話ですけど、折り返しの話があるからとても清々しく感じます。それに、 それぞれの各話間をより強く関連付けて、一冊の本として繋げる役割もありますし。
ほとんどの話の主人公は女性なのですが、どの女性も凛としてとてもかっこいいです。何だか今津線に乗ってみたくなりました。
PS. 今津線と銘打っているワリには、西宮北口から先の2駅の話が無いのがちょっと残念?(笑)
著 者:有川 浩
ジャンル:小説
出版社:幻冬社
四六版:221ページ
価 格:1,470円