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ホテル・ルワンダ

  土曜日に「ホテル・ルワンダ」を観て来ました。

 見に行ったのは渋谷のシアターN
ここは真っ先に公開を決定したミニシアターでしたが、ミニシアターだけにキャパが少なく、毎回満員御礼の立ち見状態のよう。それを受け、公開する映画館がまた増えたようです。

 いやー、いい映画でした。映画を見終わって、ただただ映画の中へ、ポールへ、そしてドン・チードルの演技に惹きこまれていた自分に気づきました。
 いろいろ考えられたのは暫くたってから...
<以下 ネタバレ注意>

 で、思ったこと、感じたこと(いつになくちょっと長文)

 まずこの映画、ルワンダで起こった虐殺についてフォーカスをあてたものではありません。むろんその悲劇は映画の中の重大なファクターではありますが、その事実を知るには、この映画はあまりにも情報不足です。

 やはりこの映画の見どころは、家族を守るのが精一杯のはずだった普通の男 ポールが、ホテルに押し寄せる1200人の人たちを守る男に変貌していく様子にあると思います。
ポールはアメリカ映画にありがちなマッチョなヒーローではありません。ホテルマンとして培った話術と賄賂の使い方だけが頼りの男です。でもそれだって覚悟が無ければできません。賄賂にするものがなくなった時、政府軍のビジムング将軍を恫喝さえしているのですから。

 彼は始めのうちは成り行きで人々を助けていきます。
でも彼を頼りに送り届けられる孤児、集まってくる人たち、動揺するホテルの従業員、彼らを前にしてだんだんとポールは変わっていきます。
 決定的となるのは頼りにしていた国際社会からの助けが来ないことを知った時、スコールの中で立ちすくした時からです。
今は誰も頼れない、自分でできることをしよう、そう感じたポールはホテルマンの制服 スーツにネクタイを身にまとい、ホテルマンとして身に付けた能力、話術と賄賂で民兵や政府軍と渡り合います。
その変容ぶりはドン・チードルの惚れ惚れするような演技で、スクリーンのこちら側にひしひしと伝わってきました。

 そんなポールもあの"川沿いの道"を走った後、一人で着替えている時に脆くも崩れそうになります。
当然ですよね。あんな光景を目にしてしまったのですから。
でも皆の前では崩れない。みんなが自分を頼りにしていることを知っているからです。

 映画はあくまでポールの視点で描かれます。
ポールが知らなかったこと、体験しなかったことは出てきません。逆にポールが知ってしまったけど、皆が知らない知られてはいけないことは、ポールと観客だけの秘密です。
 そんな演出、そしてドン・チードルの素晴らしい演技も相まって、深く深くポールの心情に没入できました。
 この映画を見て暫くの間は、あまり内容について考えることができなかったのは、それだけ映画に入りこんでしまったからかもしれません。

 しばらくたって考えると、ポールと同じ立場に立ったとき、自分に同じことができるだろうか?
いやルワンダのような悲劇じゃなくとも、普段の生活の中でも人の為に自分にできることをする。
そんな当たり前のようなことが、出来ているだろうか?
つくづく考えさせられました。

ここからは映画から離れて、ちょっと堅い話...

 ルワンダの悲劇について、
確かにあの時、私はそのような事件が新聞で報道されていたのを覚えています。
でも「怖いね」と言って、それっきりでした。
やっぱり、恥ずべきことかもしれません。
でも悲劇が起こっているのはルワンダだけではありません。
つい最近までスーダンのダルフールでも同じことがあったといいます。
まだまだ他にも同じような悲劇がおきている場所があります。
 じゃあ、何ができるのだろう。
ホテル・ルワンダのロビー”で、来日されたポール・ルセサバギナ氏(主人公のモデル)の言葉が紹介されています。

This movie, “Hotel Rwanda” will be a wake-up call. Take the message and be a messenger!

そうです。この映画のこと、このような悲劇のことを伝え、広めることから始まります。
この映画の日本公開だって、たった一人の想いから始まったのですから。

ピースビルダーズ・カンパニー ポール・ルセサバギナ氏 公演要旨
国境無き医師団 ダルフール緊急事態

こう書くとネガティブな暗いイメージばかり先行してしまうアフリカですが、決してそんなことはないと思いますよ!
久々に"A Day in the Life of Africa"(2002年2月28日のアフリカの各地の様子を撮った写真集)を引っ張り出してみました。
明るい表情、生命感あふれる大地、日本のほうがよっぽど暗いです。
ルワンダだって、あのマウンテンゴリラ棲む愛すべき国として、登場しています(83ページ)

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コメント (4)

nora_mike:

近所に来ていないかと思って探した所、
立川の例の場所の目の前ではないですか(笑
アフリカにも一度行ってみたいですが、
多分、無理でしょうね・・・

yomikaki:

nora_mike さん
アフリカはともかく、立川のキャッシュついでに(って発見済みでしたっけ?)映画、見てみて下さいね。
ではでは

nora_mike :

おはようございます
なにやら、大々的に公開されているような映画ではなさそうですね。
立川は、場所は見当が付いたのですが
花壇?あり、人ありで、近寄りがたし
しぶしぶ帰ってきました。

yomikaki:

nora_mikeさん、こんにちは。
この映画はメジャーな配給会社が絡んで無いので、大々的には宣伝されてません。
でも数々の映画賞を受賞していまし、昨年のアカデミー賞にもノミネートされたほどの作品ですよ。
こんな映画が日本でお蔵入りしそうになっていたのは不思議でなりません。

立川のキャッシュ、確かにちょっとタイミングが必要かもしれません。

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2006年02月02日 06:44に投稿されたエントリのページです。

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