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カルトの子/米本 和広

 地下鉄サリン事件から、既に十余年。

 上九一色村のオウム真理教施設の強制捜査からも、それだけの時間が過ぎました。親が出家した為に教団へ入りこんでいった子供たち。その子供らは今どうしているだろうという疑問からこの本は始まります。

 親はまだ自分で考え、カルトに入りこんで行ったわけですから、まだ自己責任といえなくもありませんが、子供の場合は決して望んだわけではありません。

 けれど当然のことながら、中にいる以上その子供たちの意思にかかわり無く、宗教の”教え”を刷り込まれていきます。
反抗すれば「地獄に落ちるぞ」と脅され、時には体罰を加えられることも...

 そんな時、無条件に子供を信じ、支えてくれる大人がいれば救いがあります。
でも親は宗教に夢中で子供には無関心です。
関心があったとしても、自分は宗教信じ、そしてそれが正しいと考えているので、自分の子供を"地獄"から救おうとますます子供たちを追い込むだけ、逃げ道はありません。

 幸いにして大きくなって、カルトから抜け出せた子供たちの話もでてきます。
でも抜け出して何年たっても、そこでの体験はトラウマになって後々まで尾を引いているのです。

 この本では冒頭のオウム真理教をはじめ、エホバの証人、統一教会、ヤマギシ会における子供たちのドキュメントです。もともとこの本の著者はヤマギシ会について取材を進めているルポライターです。
ですのでヤマギシ会の子供たちに対する話が数多く収録されています。
圧巻なのはヤマギシ会の子供たちへ三重県が実施したアンケート。
子供たちの叫びが聞こえてくるようです。

 私は子供がいないから、正直親の気持ちはわからない部分があります。
「親はいい自分で歩む道だから、でも子供たちは...」ということを感じました。
でも確かに難しいところがあります。
カルト自体の是非もありますが、それ以外にも親の価値観をどこまで子供に伝えるのかということ。
受験に巻き込むのだって、子供たちが望んでいることなのかなと思うと、アウトとセーフの境界がよくわからなくなってきます。

カルトの子

著 者 米本 和広
ジャンル ノンフィクション
出版社 文芸春秋
文庫  354ページ
価 格 670円

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2006年02月03日 07:17に投稿されたエントリのページです。

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