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星新一 一〇〇一話をつくった人 / 最相 葉月

星新一 一〇〇一話をつくった人

 SFは読んだことが無いという人はいても、 星新一のショートショートを読んだことは無いという人はいないでしょう。

 わたしも何冊か文庫本を買ったこともあります。でもいつの間にか読まなくなってしました。 でも短くてもウィットに富み、何かを示唆してくれるような星新一のショートショートは、 O.ヘンリーと一緒に、一時期夢中になったものです。

 しかしこの本を読んだあとで、ふと考えてみるとSFって最近少なくなったなぁと感じました。
いや単に私がSFというカテゴリーを意識していないだけかもしれません。 確かに図書館戦争などは広義のSFであることは間違いないとは思いますから

 昔、それこそ中高生の頃は、SF以外はあんまり読まないと言った方が良い位、SFを読んでいました
「幻魔大戦」や「とらわれたスクールバス」など、 映画になったSFも多かったように思います。
最近の流行(はやり)じゃないのでしょうか?
もちろん、私だけ出なく世間一般が
SFというジャンルでひと括りにしなくなっただけかもしれません。

 でもそういう状況にある現在と違って、星新一が作家としてデビューした頃は、 SFは文学界で認められず苦労したようです。 これだけの大作家でしかも奥の深い作品を持ちながら、 星新一は名だたるc文学賞とは無縁ですから。ちょっと信じられないですね。この本が大佛次郎賞、 講談社ノンフィクション賞それに日本SF大賞を受賞しているのは運命の皮肉としかいいようがありません。

 でも星新一がパイオニアとしてSFのジャンルを切り開いたおかげで、 いろんな作家が活躍できる土壌ができたのですから素晴らしいものです。
 学生の頃によく読んだ新井素子などが、真っ先に上げられる一人。 奇想天外という今は無き
SF雑誌の新人賞で、 新井素子を推したのは星新一だったというエピソードはこの本で初めてしりました。

 そういうSF作家の系譜も興味を惹かれましたが、 やっぱり星新一の人生そのものが非常に興味深いものでした。
 大企業の創業者社長の御曹司として生まれ、 その企業を自らの手で他人に渡してしまうという辛い時代。その後、 SF作家として同時代の編集者などとの交流からSFの世界を切り開いていく様子。
とても興味深く読めました。

 この本では丹念に調査してノンフィクションにしたて上げていますので、 とても読みでがありました。
さらーっと読める本じゃないし、勢いで読み進められるものでもない
 星新一の生涯を追うように、じっくりと丹念に読んだため読了まで時間がかかっちゃいました。 根気が無い人には辛いかも。ホントはもっと読みやすいといいんだけどね。

星新一 一〇〇一話をつくった人 

著 者 最相 葉月
ジャンル ノンフィクション(伝記)
出版社 新潮社
四六版 571ページ
価 格 2,415円

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2008年02月06日 22:30に投稿されたエントリのページです。

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