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2003年09月22日

漂流記の魅力

 最近、この手の本ばっかりですが...
タイトルを見ると漂流記の魅力について解説した本のような気がしますが、どうしてこれは立派な漂流記そのものです。

 1793年に遭難し、ロシアに漂着した若宮丸の乗組員が10年後かけ、日本人として初めて世界を一周し帰国した様子を描いた物語です。ロシアに漂着というと、どうしても大黒屋光太夫の話が有名ですが、それにもおとらず苦節の日々を過ごしています。
若宮丸の場合はシベリアを横断してロシア皇帝に拝謁するまでは一緒ですが、大黒屋光太夫の場合と違い、そこから大西洋を横断。そして南アメリカ大陸のホーン岬を回って、太平洋に出てハワイ経由で日本に帰国します。まさに世界一周!

 鎖国を守ろうとする幕府と交易を迫るロシア。その交渉の道具としてロシア側に利用されて帰国することができたのですが、鎖国の妨げになってはと冷たい態度をとる幕府。その狭間で、せっかく日本に帰国したというのに、帰郷もできず出島から出れない若宮丸の乗組員。気を触れるものもでてしまいます。ようやく最後は帰郷することもできますが、その頃海外に出た日本人がどう扱われていたのかがよく分かります。

 非常に興味深い内容なのですが、もう少し詳しく読みたいと思ってしまいました。逆を言うと軽く読めます。

漂流記の魅力

吉村昭 著
新潮新書
191ページ
680円

2003年09月20日

異国船漂着物語

 台風が来たあとなどに浜辺にでると様々なものが流れ着いてますよね。
見知らぬ文字のポリ容器や場合によっては椰子の実など。日本は島国でしかも海岸線が長いことから昔からいろんなものが流れついてきました。その中でも大きいのが船そのもの。しかも流れ着いた船の中に見られぬ格好をした人が乗ってたら...

 この本は江戸時代から明治初期にかけて、日本に漂着した異国船の話です。

 御宿に漂着したサン・フランシスコ号の場合、漂着時に村民総出で乗組員を助け、漂着した積荷はきちんと集めて返したことが感謝された。(当時の世界情勢の中では漂着物は拾った人のものとなるのが当たり前、下手すれば漂着した人は皆殺しで積荷を奪われるのが常識だったそうです) それが縁で御宿の町は約400年後の1978年にメキシコの大統領を迎えた...。

 大分に流れ着いたリーフデ号の場合、その船尾に飾られていたエラスムス(宗教改革の発端となった「痴愚神礼賛」を書いたオランダ人)の像が、その後栃木県佐野市で「アズキ砥ぎばばあ」として祭られた...。

などなど、全部で8隻の異国船の漂着時の記録とそれを発端とする騒動や近年の交流について書いた本です。

異国船漂着物語
難破船と、彼らを救った浜辺の住民たちとの交流秘話

著者 松島駿二郎
ジャンル ノンフィクション
出版 JTB
253ページ
1,500円

2003年09月15日

TUGUMI

吉本ばなな(最近、よしもとばなな に変えたらしいが)さんの本

 どうも、と売れてる作家ってなんだかそれに乗るのがやな感じがして、結構読まず嫌いだったりする。(売れてる時って「けっ!」って感じなんですよね) でもそういう作家の中でも、後で読んだエッセイやノンフィクションで気になり、そして気に入りの作家となることって多いんです。

 村上春樹の場合は、「アンダーグラウンド」(地下鉄サリン事件の被害者のインタビュー集)がきっかけ。その切り口、文章に「この人の小説ってどんな感じだろう?」って気を起こさせました。
この吉本ばななの場合、今は廃刊になってしまったSINRAって雑誌に、沖縄あたりの離島の旅行記が載っていて、いつか読んでみたいと思いました。

 今までなかなか縁遠く読んでませんでしたが、今回図書館で思い出し借りてきたのがこの「TUGUMI つぐみ」です。(単に忘れていただけという話も)
体が弱いけどそれを補うほど有り余るエネルギッシュな従妹のつぐみ。彼女が引き起こす一夏の騒動を、主人公の目を通してつづってます。一途な、でも場合によっては残虐なほど鋭いつぐみ。こんな娘周りにいたら大変だ。

PS.よくよく考えると、「世界の中心で、愛を叫ぶ」とおんなじ位、ありがちに感じるシュチエーション(でも実生活ではあまり聴かないだけどね)

TUGUMI つぐみ

吉本 ばなな 著
ジャンル 小説
中央公論社
234ページ
価格 1,030円
 

2003年09月11日

世界の中心で、愛を叫ぶ

なんてタイトル...

 30過ぎのオヂさんが買うには、いや普通のOLでもこっぱずかしいに違いない。救いは装丁の中でタイトルの字が小さく目立たないところかな?

 中身はタイトル通り恋人を亡くした高校生の物語という陳腐な設定ですが...すごく良いです。今まで読んだラブストーリーの中で1,2を争うって感じかな(村上春樹の「国境の南、太陽の西」と競います)。

 本屋で何気なく手にとって、数ページを読んだだけで引き込まれて買ってしまいました。彼女を亡くした喪失感が、彼女と過ごした日々が、お構いなしに流れていく日常の中でくっきりと浮かびあがります。
どちらかというと速読するタイプなんですが、じっくりと染み入るように読みました(といっても2日で読んじゃいましたが...)。主人公だけでなく祖父の恋も絡めていろいろ考えさせられるところもあり、何回も読み返しそうです。

 初版は一昨年の四月なんですが、最近ベストセラーとなっているようです。私が買った本が第十五刷で発行が今年の九月二十日(おいおい来週だよ)。大きい本屋の売り上げランキングにも10位以内にはランキングしているし、来年の映画化も予定されてます。読んで損はない一冊です。

でも、タイトルが恥ずかしいなぁ。
なにもこんな大上段なタイトルつける理由もないのに...

世界の中心で、愛を叫ぶ

片山 恭一 著
ジャンル 小説
発行 小学館
四六版 210ページ
価格 1,400円+税

2003年09月07日

連載小説

仕事が忙しくなる前の、お盆に何冊か本を読みました。

そのうちの二冊が「夏みかんの午後」と「じーさん武勇伝」。前者は芸文社の「CittA」、後者は「小説現代」に掲載されたもの。2つの雑誌とも読んだことはないのですが、読者層が若い女性と若干年齢層が高そうな男性層と勝手に推測してます。

というのもこの二冊、かるーく読める小説なのですが内容はタイトルから想像されるとおりのそのままんま。
 「夏みかんの午後」は、葉山で暮らし始めたフードスタイリストのちょいと洒落た生活に恋愛を絡めたいかにもトレンディー(ちょいと死語か)な話。
 「じーさん武勇伝」は南の海を縦横無尽に駆け巡り、若い嫁さんをもらい、沈没船の財宝まで引き上げてしまうというスーパー爺さんの話。こんな爺さんいるかっ!て感じのスーパーじじい
 それぞれの雑誌の読者の夢ものがたり(と勝手に想像してるけどあってるのだろうか?)をまんま小説にした感じです。
別に悪い意味でなく、かるく楽しみながら読めます。(きびしく言えばそれだけで、あとになにも残らないけど...)

そういえば、「夏みかんの午後」は装丁が結構いいです。

夏みかんの午後

著者 永井 宏
ジャンル 小説
出版 サンライト・ラボ
141ページ
530円


じーさん武勇伝

著者 竹内 真
ジャンル 小説
出版 講談社
242ページ
1,700円

2003年08月15日

ラペルーズ世界周航記 日本近海編

  十八世紀後半にルイ十六世の命を受け、世界一周を行う途中でヨーロッパ人には未開の地であった太平洋北西部の探検をしたラペールーズの航海記です。(当時日本人もあまり蝦夷地のことはよく分かってなかったけど) また、ルイ十六世の勅命には、「江戸や長崎といった太平洋岸では日本との交易は難しいだろうけど、北東部における交易の可能性を探れ」ということも含まれています。ようは江戸から遠い分、鎖国が徹底されてないのでは?ということですね。

 ラペルーズは、フランスを出航して大西洋を横断し、ホーン岬を越えハワイを経由してアラスカへ、そしてマカオへ1787年4月に到着してます。そこからが本書の範囲である日本近海となります。マカオを出航したラペルーズは、対馬海峡を抜け能登半島沿岸に接近し、日本の船を確認しておきながら接触せず北上を続けます。
 その後は日本海沿岸を北上し、サハリン西岸と大陸の間を北上し間宮海峡を抜けようとしますが幅と深さと風で断念し、サハリン西岸に沿って南下しヨーロッパ人として初めて宗谷海峡を抜けるのです。それを記念して海外では宗谷海峡のことをラペルーズ海峡というのが一般的だそうです。
 このころアイヌの人たちだけが住んでいたサハリンは、ヨーロッパ人には太平洋北西部とは未開の地であったようです(当然日本人にとってもでしょうけど)。千島列島を北上し、ペトロハバロフスクにたどり着いて、文明人であるロシア人に会いほっとしたような記載があります。

 しかしこの本、寄港地で本国に送られたラペルーズの航海日誌を基にしてますが、ラペルーズの性格的なものか客観的事実を淡々と記載していて、ちょっと読み物としてはいまいち盛り上がりに欠けます。ただヨーロッパ人が日本近海をどう捉えてたか、その頃の日本の状況はどうだったか、と考えるとなかなか興味深いものがあります。ちょうど、ラペールーズが日本海にいる頃、日本では松平定信が筆頭老中に就任し寛政改革を行っていた頃であり、また間宮林蔵によるサハリンの探検は1809年のことです。

 ちなみにラペルーズは世界一周は叶わず、ソロモン諸島のバロコニ島で現地人に襲われて命を落とすのですが、その後のラペールズ捜索の経緯についても簡単に記載があります。


ラペルーズ世界周航期 日本近海編
ジャン・フランソワ・ガロー・ド・ラペルーズ 著
ミエ・ミュロー 編/小林 忠雄 編訳
出版 白水社 (※絶版)
272ページ
価格 4,500円

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2003年08月04日

巡礼者たち

 パリス・レヴュウ新人賞他の文学賞を受賞し、またアマゾン・コムの読者採点でも満点続出の本、らしい。(パリス・レヴュウ賞って、どんな賞だか知りませんが...)

 確かに、この本、いいです。
短篇小説って、勢い日常生活の1シーンを切り取っただけってものになり易いと思いますが、この本はそんなことありません。特に日本の短篇小説は、映画のように表面的(シーン)な描写におちいって軽いものになりがちだと思いますが、この本では登場人物の内面もうまく切り取って描写してます。
 それも、くどすぎることも無く足りないこともなく、ちょうど良い塩梅で文章が書かれており、読んでいて心地良いですね。

 この本のコピーに「短篇小説でしか書けないこと」とありますが、本当にそのとおりです。
久々にまた読み返したいな、と思う短篇小説でした。私は「華麗なる奇術師」が好きですね。

巡礼者たち
エリザベス・ギルバート 著/岩本 正恵 訳
ジャンル 小説
出版 新潮社
四六版変形 302ページ
価格 2,000円

2003年07月28日

消えた名画を探して

 ゴッホ、ピカソ、ルノワール、ダリ、名画と呼ばれる美術の教科書に出てくるような絵、それが今誰が所有しているかわからない、という。

 今から十数年前のバブル期に、安田火災が約58億円で購入して話題を呼んだゴッホの「ひまわり」に始まった日本人による名画の買いあさり。日本人による相次ぐ名画の購入は、ある意味、日本人における美術への関心を高めたという側面もある。また過去の歴史をひもとけば、時の勢いのある国に美術品が流入するのは自明の理だという。

 しかし「名画は単なる美術品ではなく、人類共通の財産である」という認識をもった欧米の国々に比べ、日本では単なる土地建物といった不動産と同様の財産として扱われているという事実を、この本では突きつけられる。さらにはイトマン事件のように不透明な美術品取引慣行を悪用し、不正取引の道具に使われたりする実態が書かれている。

 なにも絵画を購入した人だけが悪いのではない。事実、名画を購入したコレクターの多くは美術館等を作りコレクションを公開する計画をもっていた。ただバブルがはじけ、その計画が泡と消えただけである。バブルの崩壊により担保として差し押さえられた名画は、不動産と同様に購入価格と評価価格との差額が大きすぎ売れるに売れない。さらにはバブル景気で日本人によって購入されそして担保に押さえられたという事実は、そのプロヴァナンス(来歴)に汚点をつけられたという意識が欧米のコレクターに働くらしい。

 日本のコレクターによって購入された名画は、そもそも個人で購入したのか自分の会社名義で購入したのかがわからない。そしてバブル崩壊後に担保として差し押さえたのは、誰なのかは全くわからなくなってしまった。しかし売るに売れない名画は、どこかの銀行やノンバンクによって、公開される訳でもなくかといって売られる訳でもなく、倉庫に「塩漬け」されている。つまり世間からは消え去るのだ。

 今、失われた十年と言われる日本のバブル後を過ぎ不動産市場が動き始めているように、美術品も売買がされるようになってきた。ひそかに相対取引で国外に流出したり、ひっそりとオークションに出品されてきている。(だだし出品者は明かされない)

やがて、人類共通の財産である「消えた名画」もひょっこりと現れるのだろうか。

---

 図書館にあった本なのですが、美術書のコーナーにありました(笑)。確かにテーマは名画だけど純然たるノンフィクション。どういう基準で分類しているのかよくわからない。そしてこの本、文章は読みやすいのですが、バブル期の企業不正のカラクリ等の記述等あったりして、なかなか頭に入っていかず、読みえるのに非常に時間がかかってしまいました。


消えた名画を探して
糸井 恵 著
ジャンル ノンフィクション
出版 時事通信社
四六版 248ページ
価格 1,800円

2003年07月23日

長くつ下のピッピ

スウェーデンの童話作家 リンドグレーンの代表作

子供のころ読んだ気がしますが、
嫁さんが図書館から借りてきたのを機に
もういちど(?)読んでみました。

訳わからん...。

ピッピという女の子が活躍する(?)話なんですが、
よく言えば自由奔放、悪く言えばデンパの入ってる子供。
子供らしい自由な発想といえば聞こえがいいけど、
振り回される周りが大変そう。
 → と、思うワタシは日本人なんだろうね。

ピッピもこの本以外に続編が2作ほどあるんだけど
同じ調子なのだろうか?

それとこの本、初版が1964年と40年近く経っていることもあり、
ちょっと訳が古い感じがする。

長くつしたのピッピ~世界一つよい女の子
リンドグレーン作品集 1
リンドグレーン 作/大塚 勇三 訳
ジャンル 児童文学
出版 岩波書店
A5版 264ページ
価格 1,700円

2003年07月18日

パーク・ライフ

ご存じ、芥川賞受賞作。

本屋でぱらぱらめくり面白そうだけど、
自腹で購入までして読みたいと思えなかった。

図書館で借りようと思ったら、案の定予約だらけ。
しばらくほっておいたら、図書館の順番待ちは解消されたみたい。
こないだ近所の図書館で検索機でみたら、
閉架書庫にありました。(でもなんで閉架なんだろ)

非常に軽い(さっと読める)本なので
読み始めたらあっという間に読了。

”他人だから恋が始まる”ってコピーだけど、
恋までたどりつかない...。
今時の人間関係をさらりとつづってます。
ほんとにさらりと。
だからなんなのって感じで、頭に残らない。
きっと1ヶ月も立てば内容はすっかり忘れるでしょう。

と、そう思ってたんだけど、さっき読み直したら、
文体が軽いのは軽いんだけど、公園でのぼけーとしてるときの
とりとめのない頭の中の考えや公園の中の様子が生き生き描写されて
なかなか、いいかもしれない。

もしかすると主人公は人間じゃなく日比谷公園かもしれない。
脇役は駒沢公園ね。

最近、天気が悪いけど梅雨が明けたら、近所の大きい公園に言ってみよう。

パーク・ライフ
吉田 修一 著
ジャンル 小説/もう一篇 "flowers"を同時収録
出版 文芸春秋
四六判 184ページ
価格 1,238円(+税)

7/5読了,7/18二度目の読了

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